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読書について

消滅世界 村田沙耶香 様々な価値観が消滅する世界

ご訪問いただきありがとうございます。

 

今回は村田沙耶香さんの消滅世界の感想を書いていきたいと思います。

 本日紹介するのは以下の通りです。

 

紹介

・ あらすじ

・ 消滅世界の世界観

・ 感想

・ まとめ

 

あらすじ

本作品は、第二次世界大戦中に、男性が戦地に赴き、子供が極端に減り危機的状況に陥ったのをきっかけに、人口受精の進化が飛躍的に向上した世界です。そのため、人口受精が全世界に広まり、交尾で繫殖する人種がほとんどいなくなりました。

 

よって、夫婦で性行為を行うことは近親相姦とし、タブーとされています。

 

そんな中、主人公雨音は性行為によって生まれた子供でした。そして昔の価値観に固まった母親と二人で生活し、母親が作った世界の中で過ごしていました。(昔の価値観というのが、自分でも書いていて不思議に感じますが笑)

 

小学生になるときには、自分の価値観と周りの価値観が違うことに気づきます。そこから、だんだんと母親と話さなくなって行きます。

 

しかし雨音は、幼い時に母からに見せられた価値観を意識せずにはいられませんでした。実際に雨音は「身体の中に呪いが残っている気がする」と語っています。

 

 そんな雨音が性行為とは無縁の家族作り、家族という宗教を信じて行くようになります。しかし、家族という宗教も新たな価値観の前に崩れさって行きます。

 

雨音が実験都市というディストピアを体現したような場所へ向かうことで、物語がさらに加速していきます。

 

 

 

 

消滅世界の世界観

・ 夫婦は近親者であり、性の対象ではない

・ 結婚していても外で恋人を作るのが常識

・ 夫婦間でのセックスはタブー

・ 二次元に恋人を作る人が多数

・ 人口受精が子供を産むための方法として主流

 

 

このような世界観の小説でした。僕は読む前は、セックスが消えた世界という

ことだけを知っていましたが、どんどん自分の知らない世界観が入ってくるなーって、感じてました(笑)

 

 

 

感想

・ 逆アダムとイブ

・ 近未来

・ 世界を食べる動物

 

 

 

・ 逆アダムとイブ

アダムとイブは禁断の果実を食べたことにより、羞恥や恋を知るようになりました。

 この現象とは逆で、人間は禁断の果実とは真逆の果実を食べたことにより、楽園に帰って行くのではという話しです。

 

消滅世界では技術発展により、様々なものが無くなって行きます。本作品では、性的なものや家族がらみのことが、対象になっている気がしますが。

 

現代社会でも、技術の進歩によって消滅したものがいくつもあると思います。様々なものが無くなっていく中で、今まで使用してきた物が消滅していき、新しい価値観が浸透していく。

 

どんどん不要なものが無くなり、便利になっていく内に、生きる意味を乱せない人間が、本当に逆アダムとイヴのように楽園(安楽死などで)に帰っていくのかなと感じました。

 

それこそ、村田さんの殺人出産の中に出てくる短編集、「余」という作品のように

 

 

 こういう状況にこそ、ニーチェの超人という考え方とかが生きてくるのかなと

感じました。

 

 https://bmaiku.hatenablog.com/entry/2019/09/30/115401?_ga=2.215111511.1131347623.1569477562-1298681532.1568949195

 

 

 

 

・近未来

 

 消滅世界というタイトルの通り、今普通だと言われることが欠落していく世界。村田さんの作品を読んでいて感じるのが近未来というワードです。

技術に進歩によって、そう遠くない未来、この世界観を作るのに必要なテクノロジーは出来るのではないか?という疑問を感じます。

そして、中国なんかで実験都市みたいのが出来るのではとか思ってしまいます(笑)

 

技術が出来上がれば、何パーセントかの人がそれを行い。だんだん流行ってたりするのかなーなんて感じました。殺人出産の中のトリプルというお話のように、SNSから話題になり学生に流行りだすみたいな。

 

5年後、10年後にどのような世界になっているのか、楽しみでもあり

不安でもあります。

 

 

 

・ 世界を食べる動物

 雨音はラストシーンで人間についてこのような言葉を発します。

 

「そうね。いろいろ食べるけど、一番は、世界よ。世界を食べて、その世界にぴったりの形になる動物なの。」

 

言い得て妙だなと感じました。確かに人間は生まれた時から、世界を食べその形に成長していくんだろうなーと感じました。

 

そして世界が変われば、その世界に順応していく。もしも世界に順応できないと、世界から外されていく。

 

それは、自分の気づかない無意識の内に変化しているんだろうなと。

 

このことを、進化や成長とも呼ぶのかもなーと思いました。

 

まとめ

 消滅世界を読ませていただいて、家族を作る意味や実験都市のシステムについて色々考えさせられました。怖いなと思ったのは、家族というシステムの消滅によって、実験都市が更なる飛躍を遂げそうだなということです。

 

家族が居なくなったのら、実験都市のシステムが子供を作るのに、推進されそうです。家族を作るのが少数派になれば、子供が生まれてこなくなるわけですから。

 

まぁそうなったとしても、そのシステムを使用しない国やレジスタンスとかいそうですけど(笑)

 

とにかく、こんな世界にはならないで欲しいとおもいました。

 

人間は世界を食べる生き物ですから、新しく生まれてきた人間が、それを正常化してしまえば、そのことが普通になってしまうのでしょう。

 

100年後には、昔の人達は仕方なく、恋をして家族を作ってたんだよなんて、言われたくないものです(笑)。

 

それでは最後までお読み頂き、ありがとうございました。